17(R-18)

折れていた骨が接合した右手
ギプスからシーネに代わり、それも外れてようやく自由になり、はじっと己のそれを眺めていた
肩は動かず、肘の動きは鈍い
指を握りこむ動きもぎこちない
曲げた指関節を伸ばしたところで湯を浴びて濡れたままの髪からぽた、と水滴が肩に落ちた
月明かりを浴びて青白く見える肌
右手の甲に未だに残る多数の傷跡
中指の割れて折れた爪は未だに伸びきってはいなかった
血豆もあり、色を塗ったように赤黒い人差し指と薬指の爪
ああ、酷い見た目だ――と思ったところで隣に人が立つ
見ていた手をとられ、その甲に唇が触れて

「……エルヴィン」
「ギプスが、取れたのだな。
「はい。あまり動きませんが……」
「リハビリが必要だろう。だが、無理はするな」
「はい」

そう言葉を返すと彼の手が手首から腕へと辿るように移動した
首まで来ると鎖骨に触れて寝衣の釦が外される
下まで外されると右側の襟を引かれ、右肩が露出した
喰い千切られ掛けたそこには手よりも大きく、酷い傷跡が残っている
その部分をエルヴィンの手が撫でるように触れて、それを追うように唇が触れた
残る縫合の跡を辿りながら彼が言葉を紡ぐ

「痛みは?」
「ないです、が……あの、エルヴィン」

名を呼ぶと彼が目だけをこちらに向けた
その薄い青色を見つめて、それから視線を逸らしては目を閉じる

「……続けるのなら、窓を閉めてください」
「見られても構わないが?」
「っ……そんなだから変人って言われるんですよ。閉めないならやりません」

言いながら開けた寝衣の襟を引き戻すと彼が上体を起こして窓の方へ体を向けた
一度月を見上げてから窓を閉め、カーテンが引かれる
それを見て、扉の鍵が掛けられているのを確かめてから背後にある机の方へ体を向けて寝衣の上を脱いだ
思った以上に右腕が動かないが、それでも抱かれるのには支障はないだろう
下衣の腰を締める紐を緩めると背後からエルヴィンの手が触れた
下着ごと引き下ろされ、躊躇いもなく性器を握られて思わず腰が引ける
久々だというのに構わずに手は動かされ、そのまま前にある机に上体を押し付けられた
ヒヤリとした木の天板に胸と腹部が触れる
左腕で体を支え、エルヴィンが望むままの姿勢になった
扱くように動かされる手の動きでその部分に熱が集まる

「う、ん……あっ」

同じ男だからか、その扱いは上手い、と思った
女を抱いた事がない訳はないだろう
だが、男はどうなのだろう
そんな事を考えている間にもその部分は張り詰め、ゆっくりと手が離れた
続いて左手が尻を掴んで、僅かに粘膜が外気に触れて
前を弄られた時に先走りで濡れた指でその周囲を弄られた

「う、くっ……」

久々の感触に思わず声が漏れる
まだ慣れる事は出来ず、行為には痛みを伴っていた
あまり声を上げないようにと自由に動かない右ではなく、左手で口を覆う
周囲を撫でていた指が体内へとねじ込まれて肩が揺れた
内部を確認するように指が動かされ、ある一点に触れられるとびくりと体が反応する

「うっ、んぅ……」
「ここ、か。……ふむ、分かった」

言いながら指を抜かれ、背後でごそごそと衣類を寛げるのが分かった
金属が触れ合う音やファスナーが下ろされる音
それに衣類が擦れ合う音が聞こえ、それから――熱いものが体に触れた
先ほど指を挿れられた部分に擦り付けるように触れ、それから押し当てられて
次の瞬間にはその先端が埋められた
狭い入り口を押し広げ、体内に侵入するその大きさに痛みを覚える

「痛っ……」
「力を抜け。久々で忘れたか」
「っ……う……」
「そうだ、そのまま……」

簡単に言ってくれるがこちらがどれだけ苦痛を感じているか分からないのか
その大きさに比例して異物感は強く、排除しようと勝手に反応する
それに反してエルヴィンのそれ・・は内部へと侵入を続けた
途中で先ほど指に擦られた部分に触れられて思わず背を逸らせる
するとそこを重点的に摺り上げられて、は堪らずに身を捩った

「――あっ」

明らかに自分が劣勢の体勢では力が入らず、机の表面に爪を立てて歯を食いしばる
だが口からは勝手に快感を滲ませた声が漏れた

「あ、あぁっ」
、少し力を抜け」
「む、りで――ひっ、あぁっ、嫌だ――そこ、ヤだ――!」
「気持ちが良いのだろう?初めてだな、そんな声を上げるのは」
「う、あっ――やめ、て……エル、ヴィン――!」

泣きそうな――まるで、女が善がるような――声ではないか
普段はリヴァイと似ていると言われるくらい、静かな話し方をするらしい自分
意識した事はないが、人から言われるくらいなのだからそうなのだろう
そんな自分が、こんな声を出す事が出来るなんて

「やぁっ、あ、あっ、あぁ――」

涙も勝手に零れ落ち、抑えようにも抑えられるようなものではない
久々の行為で痛いのに、同時に意識が飛びそうなくらい気持ちが良くて――
膝がガクガクと震え、逃れようとしても背後から押さえこまれて、その力の強さには敵わなかった
只でさえ右腕が自由には動かないのに、体重をかけて押さえ込まれている
だというのに、腰を動かすのだから彼の器用さには感心するくらいだった

「あ、あぁっ……ん、はっ、あ――!」

びくりと体が痙攣するように跳ねてエルヴィンの手に握りこまれていたものの先端から体液が散る
床を掃除しなければ――とそんな事を頭の片隅で考えたところで団長が背へと圧し掛かってきた
体を預けていた机が軋んだ音を立て、そして、埋められているものの先端からじわりと熱が広がる
耳元でエルヴィンの乱れた呼吸を聞き、暫しその状態でいたがふうと息をはくと背から重さが消えた
それから埋められていたものが引き抜かれ、力が抜けた膝を使いなんとか上体を起こす
風呂に入ったばかりだというのに酷い目に合った
体が落ち着いたらもう一度風呂に入らなければ
体内に出された物も出さないと気持ちが悪い
そう思いながら机に手を触れて体を支えながら彼の方へ体を向ける
足首に絡まる寝衣を足で蹴り、目に掛る髪を避けながらエルヴィンを見上げた

「……酷く、乱れてしまいました」
「お前もあのような反応をするのだな」

言いながら彼の手がこちらの腰に触れ、太腿へと撫で下ろされる
脚が抱えるようにして上げられて足首から寝衣が抜け落ちた
そのまま背後へと倒されて今度は仰向けの状態になってしまう
そして、下腹部には再び硬さを取り戻したものが触れていた

「っ……エルヴィン」
「もう一度、頑張ってくれ」
「労わってください」
「リハビリだ、

こんなリハビリがあってたまるか
そうは思うのだが、初めての絶頂を迎えたばかりの体は思うようには動かなかった
易々とこちらの体勢を整えられて、再び体内に彼のそれ・・が埋められる

「あ、う……!」
「二度目になると挿れやすいな」
「……っ……」
「さぁ、また同じところを攻めて良いな?」
「や、止めてください。本当に、辛い――!」

言葉の途中で同じ部分が攻められてびくりと肩が揺れた
同時に息を詰めるとエルヴィンが笑う

「体は素直だな。場所は覚えた……さあ、声を聞かせてくれ」
「ま、待って……あの、ここは、分隊長の兵舎で……」
「そうだな」
「何故だか最近は大男も、メガネもここで寝起きを……」
「仕事が捗る」
「ですので、あまり声を上げるのは……」
「気にするのか」
「……気になりませんか」

ついさっき堪えられずに大きな声を出してしまったが、それでもやはり近隣の事は気になるだろう
無口なミケは良いとして、ハンジの方は何を言われるか分からない
そう思っているとエルヴィンがこちらの膝を撫でて薄く笑った

「聞かせてやると良い。あの二人も勝手に発散するだろう」
「……想像させないでください」

一人でやるのか、それとも相手がいるのか
そんな事まで考えてしまった自分が嫌になる
大男はともかく、あのメガネの分隊長は――と思ったところでぐっと抉るように内部を擦られて思わずエルヴィンの肩を掴む手に力が入った

「あっ」
、しがみ付いていろ」

そう言われて、彼の首に両腕を回す
出来る限り、声を出さないように耐えなければ
はそう思いながらエルヴィンの肩に額を押し付けた


◆ --- ◆ --- ◆ --- ◆ --- ◆


パシャッと両手で顔に水を掛ける
ぼんやりとしていた頭の芯がはっきりしてくるのを感じながら顔を上げ、タオルで水滴を拭って
目を開けると鏡に反射して自分の背後に立つミケの姿が見えた
その背丈を見て改めて大きいなと思いながら背後を振り返る

「おはよう」
「……おはよう」
「お前、いつも寝癖が凄いな」

あちらこちらに跳ねている毛先を見てそう言いながら洗面台の前から避ける
ミケが一歩前に出て、髪を両手で後ろへと流した

「何故か跳ねる」
「そうか」
「……
「ん?」

ミケの体で大半が覆われる鏡
僅かな隙間に写る己の顔を見ながら髪を整えていると彼がこちらに体を向けた
じっと見下ろされて、なんだと首を傾げる
すると視線だけが逸らされてから口を開いた

「昨夜は、その……大変だった、ようだな」
「っ……」
「隣だから、聞こえてしまった」
「……」
「安心しろ。俺の部屋であの程度ならば、ハンジの部屋までは届かない」
「……」
「普段の落ち着いた声とは違い……随分と、可愛らしい声だった」
「……」
「愛する相手だけに、見せる顔があるのは良いことだと思う」
「……」
「……
「あ、あぁ……悪い、寝る間際に妙なものを聞かせたな」
「……いや」
「お前、大丈夫だったのか」

こちらの言葉に今度はミケが首を傾げる
は頬の横に流れる髪を指先で弄りながら彼を見上げた

「勃たなかったか?」
「っ……」

息をのむのが気配で分かり、口元をタオルで覆って込み上げる笑いを隠す
気持ちを落ち着かせると扉の方へと体を向けた

「まぁ……お互いに、大変だったな」
「そうだな……」
「次からは抑えるように……努力はする。昨日も、二回目は抑えたつもりだったが」
「……大丈夫なのか、体の方は……」
「嫌がっても無理矢理ヤられるだけだ」
「そう、なのか」
「初めての時も強引だった。……本当に変人だな」

言い終えて扉を開けると廊下に出る
自室に戻ろうと歩き出すと、ハンジがこちらへと歩いて来るのが見えた
下ろした髪がミケ以上に爆発してるのを見ているとニヘッと笑って軽く手を上げられる

「おはよぉ、
「おはよう。なんだその頭は」
「毎朝なんだよねぇ。困ったものだよ」
「少し切ったらどうだ」
「そうだね、だいぶ伸びたし……ん?目の下に隈が出てるよ?」
「……そうか」
「あー……エルヴィン?腕が治ったからってまだ禄に動かないのに……大変だね」
「そうだな……こんな風にしか動かない」

そう言い、渾身の力で右肩を動かすがぎこちなく、水平には程遠い位置までした上げられなかった
そんな自分を見てハンジが慌てたようにこちらの腕に手を触れる

「駄目だよ、急に動かしちゃ……ああ、筋肉が硬直してる。マッサージして、少しずつ動かさないと」
「そうか」
「朝食前にやってあげるよ。部屋で待っててね」
「……」
「人体を知り尽くしてる私がやるんだから確かなものだよ」
「……だからこそ、触られたくねぇな」
「マッサージしないといつまでも復帰できないよ?」
「……了解した」
「うん、ちょっと待っててね」

言いながら洗面所へと向かうのを見て自分は階段の方へと歩き出す
右腕を摩ると確かに左腕とは違って筋肉がガチガチになっているのが分かった
このままでは動かないから大人しくマッサージを受けておこう
はそう思いながら朝日が差し込む廊下を歩き出した

2023.05.14 up